トヨクニの渓流刀でバトニング

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2016年11月30日 20:13


いつものように、YOUTUBEを見ていたら、
焚き火用の薪をナイフでパカーンと気持ちよさそうに割っている動画を拝見しました。
地面に薪を置いて台にし、ナイフを薪に当てて薪で叩いて割っていきます。
初心者ながら、なるほどと思い、ググるとバトニングと言うらしい。
薪でバトン、という事みたいです。

焚き火がしたくなった僕は焚き火台を購入し、
刃物も調達することにしました。

僕はどうやら、最初は身近に売っている物をとりあえず
購入してみるという癖があるらしく、
近所のホームセンターでナタとノコギリがセットになった
2000円くらいの安物を買ってきました。
喜んで、大沼公園のキャンプ場に持ち込み、バトニングをしたわけです。

さて、刃物なのですが、両刃(もろは)と片刃(かたは)があります。
日本では所持が禁止されている、ダガータイプという刀身のの両側が刃になっているタイプと、
日本刀みたいに刀身の片方しか刃がついていないタイプがあります。
現在日本で購入できるのは片刃のみです。

わかりにくいのですが、
刃の断面を見て、「レ」の字型のなっているものを片刃、
同じく「V」の字型になっているものを両刃と呼びます。
https://www.toyokuni.net/mente/dumen.htm

購入したナタは「レ」の字の片刃でした。
いざ、キャンプ場で使用してみると、
バトニングが大変で大変で手が痛くなりました。

片刃でバトニングしたら、薪に刃が食い込んで行くんです。
食い込む方向は、「←レ」
刃が無い方向に食い込み、非常に大きな力が必要になります。
バトニングでハンドルの木材が割れてしまいました。
片刃の刃物ではバトニングは大変です。

今なら真っ直ぐに札幌の秀岳荘に物色しに行くのですが、
またホームセンターに行き、両刃のナタを探しました。
唯一あったのが、シルキーナタという製品です。
https://www.silky.jp/items/555-15.html

重くてごつい、ステンレスのナタです。
刃厚が6ミリと極厚で、枝払いなんぞラクラクできてしまいます。
流石にキャンプに持って行く前に家でバトニングしてみると、
確かに食い込まないのですが、刃が厚すぎて、
やはりバトニングは行いにくかったです。

やっとインターネットで刃物を物色しはじめました。
何ででしょうかね。
もっと早く物色すれば良かったです。

目に着いたのは、高知県は土佐の和式刃物、トヨクニの刃物。
三代目昌之(まさの)が鍛造して作っているらしい。

僕は機械工学出身なのですが、
刃物は鍛造に限ります。

何故かというと、必ず一回は溶けた金属を冷やして固めるのですが、
鉄の固さは固まった時の粒子の大きさで決まる側面があります。
結晶が小さければ小さいほど、鉄は固く強くなります。
日本刀が叩いて鍛えるのは、金属粒子を細かくするためなんです。

トヨクニの刃物は叩いて鍛えているようです。
いいじゃないですか。
で、トヨクニのHPを物色し始めます。

トヨクニは普通の「鉈」と、狩猟用の「剣鉈」を作る会社のようです。
「鉈」は普通の四角い形です。
始めて知ったのは「剣鉈」で、鉈が日本刀の様にとがっているんです。

30センチくらいの剣鉈がカッコイイのですが、
日本には銃刀法があって、15センチ以上の刃物は携帯出来ないことになってます。

長い剣鉈はカッコイイのですが、
剣鉈は基本的に獲物にトドメを刺す刃物でもあるため、
長いものは止めました。

刃渡り15センチ以下のもの。

刃物の材料ですが、
ステンレスより、鉄と言うより「鋼」の方が良く切れます。
カーボンスチールというヤツですね。

鉄は炭素を少量添加することにより、硬度を上げることが出来ます。
炭素鋼と呼び、一般的な用途の鋼の炭素含有量は0.4%程度です。

さて、トヨクニのHPをまじまじと見ると、
使用している鋼に、普通グレードの「白紙」、高級グレードの「青紙」と記載があります。

いろいろググると、正体が分かりました。
日立金属が製造する、刃物用鋼です。
炭素量が結構高いですね。
1%以上あります。
相当硬いですよ。
http://www.hitachi-metals-ts.co.jp/product/high-class-cutlery-steels.html

白紙より、クロム(C)やバナジウム(W)というレアメタルを添加し、
強度を上げているんですね。
金属は単体では強度が低く、使いにくいのですが
合金にすることにより強度が上がり、融点が下がります。
太古から青銅という、銅とスズの合金を使用してました。
スズが融点を下げ、強度を上げる訳です。

刃物としては、白紙より青紙の方が優れているようです。
青紙でも1号と2号があり、2号の方が硬いのですが研ぎにくい用です。
青紙1号が最もバランスの良い刃物であると言うことがわかりました。

現在の日本で購入することの出来る、最も切れるのが青紙2号で、
青紙1号は2号に硬さは譲るものの、メンテナンスを考慮したら最高の金属と成ります。

これ以上の刃物が欲しければ、
タタラ製鉄法で砂鉄からケラを作り、刀鍛冶に打って貰うしかないと思います。

で、バーゲンセールで半額だったのが写真にある「渓流刀」です。
刃渡り12センチ、ダマスカス、刃はモチロン青紙1号。

刃はシルキー鉈より薄い、4ミリ。
どうやら青紙なのは刃の部位だけで、柔らかい鉄で
サンドイッチしています。
日本刀みたいな作りですね。

さらにダマスカス鋼風になってます。
刃の文様がみえますかね?
違う種類の鉄を数回サンドイッチにして、古の失われたダマスカス鋼の
文様を再現しています。
トヨクニのHPでは本物のダマスカスと言っていますが、
あくまでもダマスカス風です。

届いた渓流刀でバトニングしたら、刃がヌルヌルと薪に入って行きます。
凄い切れ味です。

キャンプ場でフェザースティックを作って見ましたが、
ちょっとやりにくかったです。

これは、トヨクニの刃物が「ハマグリ刃」である事が原因でしょう。
刃の断面を見ると、刃先で湾曲している作りになっています。
削っていくと、刃が湾曲にそって薪から離れる動きをしてしまうんですね。
5センチくらいの朽ち木を焚き火にくべようとして、
渓流刀で削ってというか、木に刃を打ち込んでたたき割りました。
凄いですよ。斧の様でした。

刃が4ミリと極厚のため重量があり、鉈と同じ使い方が出来ます。
フェザーがやりにくい以外は良い刃物だと思います。
一生モノです。

オピネルやモーラナイフは、包丁の様に刃の断面が真っ直ぐで
フェザーが削りやすいんですね。
本刃付け形状と言うらしいです。
http://tojiro.net/jp/guide/part_blade.html

僕の渓流刀をハマグリ刃から、本刃付け形状に研げば良いんでしょうが、
僕は出来ないのでそのうちモーラナイフでも買って見ようと思います。
ナイフって結構奥が深いですね。
泥沼に嵌らないように気を付けましょう。

長文・駄文失礼しました。

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